技術プロフィール:新作Cloudboom Echo


マラソンをもっと速く、もっと快適に走れるシューズが登場しました。カーボンファイバー配合のプレートを搭載したCloudboom Echoは、爆発的なスピードと最高クラスの快適性を兼ね備えた1足。最速を誇るランナーたちから届いた様々なフィードバックと実験結果を基に、2年の歳月をかけて開発されました。このハイテクでハイスピードなシューズの技術的な面についてご説明します。



新作Cloudboom Echoは、マラソンでレベルアップを目指す時、ライバルや自己記録を打ち破りたい時に武器となるシューズです。タデッセ・アブラハム、レイチェル・クリフ、クリス・トンプソン、ジェイク・ライリーをはじめとする多くの最速アスリートたちと協力し、可能な限り速く、効率的で、快適なシューズを生み出しました。アスリートが大本命とするシューズの誕生です。


スピードを追求した形状


Cloudboom Echoは最高のスピード、効率性、快適性を叶えるために設計されました。このシューズで唯一スピードに欠けていたのは、その製作過程です。Cloudboom Echoが「スピードマシン」として完成品にたどり着くまでに作られた試作品は100足以上。エリートアスリートのフィードバックに基づき、設計、テスト、再設計が繰り返し行われました。


Onシューズの核となるのは、スイスの技術が生んだSpeedboardです。Cloudboom Echoはこのプレートにカーボンファイバーを配合。またカーブと剛性(抵抗力)を強化し、これまで以上にパフォーマンス志向のシューズに仕上げました。足を踏み出す度にSpeedboardが強くたわみ、よりパワフルな推進力を生み出します。





レスポンスの良い快適性


Cloudboom EchoのSpeedboardは、従来のCloudboomに搭載していたものと比べ、フォアフットのクッション性が向上。これが、ハーフマラソンやフルマラソンのような長い距離を走るときに欠かせない、快適な履き心地を実現しています。でも、これによってスピードが抑えられてしまうことはありません。


むしろ、その逆です。これは、ランニング時にシーソー効果をもたらします。着地で生じたエネルギーはかかと部分の反力となって上向きにSpeedboardへと伝わり、それが前方(Speedboardの前部)へと移動します。この効果も相まって推進力がアップし、爆発的なスピードが得られるのです。


「速さだけを追求したレーシングシューズをデザインしたいのであれば、カーボン100%でSpeedboardを作っていたと思います」。Onのフットウェア製品管理部門の責任者を務めるエドアール・コヨンはそう話します。「しかし、それでは履き心地の悪いシューズになってしまい、長距離を走るアスリートが求めるものとは正反対のものになってしまいます。そこで私たちは、最適なバランスを生み出すことに注力し、満足のいく結果を出すことができました」


クラウド・サンドイッチ


スピードと快適性を融合させたCloudboom EchoのSpeedboardは、外からも確認できる位置、2層のCloudTecの間に配置されています。速さを追求したシューズにしては驚くほどソフトな着地をもたらすのはそのため。フォアフットのクッション性はSpeedboardの上部で強化し、ミッドフットとかかと部分のクッション性はSpeedboardの下部で強化。こうしてミッドソールがシューズの「エンジン」となりました。


Speedboardがスプーンのような形状になっているのは、こうしたクラウドパーツとフォームの量の調節によるものです。しかしその形状のお陰で、Cloudboom EchoにはCloudboomよりも大きめのクラウドパーツをより多く搭載し、更に快適さをプラスすることができました。


他のOnモデルよりも大きく幅広に作られたクラウドパーツは、垂直方向と水平方向から受ける衝撃をより素早く吸収します。アスファルトからの衝撃を受け止めると同時に、前述のシーソー効果も促す働きがあります。


更にCloudTecの下層に使用した素材は素早く圧縮するため、シューズのかかと部分に体重をかけた時にブレーキがかからず、すぐに前傾姿勢に移行できるサポート効果をもたらします。





試作品


Cloudboom Echoの試作品を使った複数のテストでは、フォアフットのクラウドパーツが快適性を高め、酸素消費量を減らす働きをすることも分かりました。更に、クラウドパーツを使用していないシューズと比較して、走行効率が2.5%高いことも分かりました。なぜでしょう?理由はこうです。CloudTecを搭載したアウトソールは踏み込んだ時にフォアフットがより早く圧縮。そしてCloudTecは一度圧縮されると、爆発的な蹴り出しに必要な硬い土台となるのです。


確かなトラクション


マラソンは全力で立ち向かうものですから、大会用のシューズにもそれを期待したいところです。シューズに関する最後の心配事は、当日にどれくらいパフォーマンスを発揮するかということ。トラクションは見落とされがちな点ですが、シューズが路面と接触する部分なので、パフォーマンスを十分発揮するには欠かせないポイントです。


そのためCloudboom Echoでは、高性能なラバーコンパウンドを戦略的に取り入れることで、シューズの接地面積を最大にし、最大限の効率化を図りました。それに加えて今回の新しいグリップパターンはこれまで以上に水のキレが良く、路面が濡れていても問題なく対応できます。マラソン大会は好天の日ばかりではありません。これも大切なポイントです。





トライアスロンにも最適


OnのスーパーシューズCloudboom Echoは、マラソンをより速く走るために設計されました。ただ、トライアスロンにも対応できるよう、小さいながらも重要な設計が施されています。シューレースに簡単に巻き込める薄いシュータンを採用し、かかと部分にはよりソフトな感触と柔軟性をもたせました。これは、急いで着脱する時に役立ちます。


「トライアスリートがバイクから飛び降りてランニングシューズに履き替える時の事前準備として完璧です」とコヨンは言います。


「このシューズの履き口は、私たちがこれまでに設計したシューズの中で最も広い。これを履いた瞬間、一歩も走らないうちに、既にこのシューズが超高速かつ効率的であることが分かるでしょう」